TOEIC900点でも通じない人の共通点──スコアが測っていない「自分の音」と、直す順番
TOEIC Listening & Reading が測るのは聞く力と読む力で、話す力は別のテストの対象です。900点でも聞き返される4つの理由と、モーラと音節のずれをどう直すか、AIと人の役割を分けた練習の順番を、英語発音矯正の視点で解説します。

TOEICで900点を取ったのに、会議で聞き返されます。メールは問題なく書けるのに、電話になると相手が黙ります。この落差に悩んでいる方は少なくありません。
そして多くの場合、原因は「英語力が足りない」ことではありません。測っていないものが原因になっているだけです。ここを取り違えると、もう100点上げる方向に努力が向かい、通じない状態はそのまま残ります。
今回は、スコアと「通じる」の間に何があるのかを分解します。
要約
- TOEIC Listening & Reading Test が測るのは聞く力と読む力で、話す力と書く力は別のテストの対象です。スコアは自分の発音が届くかどうかを示していません。
- 通じない原因の多くは、日本語のモーラ(拍)の感覚で英語の音節を並べてしまうことと、強く言う位置がずれることにあります。
- 直すときは、何を最初に直すかを人に見てもらい、その反復をAIと行う順番が現実的です。
TOEICのスコアが測っているもの
| テスト | 測っているもの | 形式 |
|---|---|---|
| TOEIC Listening & Reading | 聞く力・読む力 | 約45分100問+75分100問のマークシート |
| TOEIC Speaking & Writing | 話す力・書く力 | 上記とは別のテスト |
まず前提を確認します。TOEIC Listening & Reading Test は、公式に「Listening(聞く)・Reading(読む)という2つの英語力を測定します」と説明されています。リスニングが約45分で100問、リーディングが75分で100問、合計約2時間の解答をマークシートに記入する形式です。
話す力と書く力については、TOEIC Speaking & Writing Tests という別のテストが用意されています。同じTOEICという名前が付いていても、測っている対象が違います。
つまり、L&Rで900点というスコアは、聞き取れて読めることの証明です。自分の口から出た音が相手に届くかどうかについては、そもそも測定の対象に入っていません。これは欠点ではなく、テストの設計です。
「通じない」が起きる4つの理由
| 理由 | 何が起きているか | 相手側の受け取り |
|---|---|---|
| リズムの単位が違う | 日本語のモーラ(拍)の感覚で英語を並べる | 平坦に聞こえ、語を切り出しにくい |
| 語のつながりが消える | 話すときに語の切れ目で区切る | 聞き慣れた音のかたまりにならない |
| 強く言う位置がずれる | 語の中で強める場所が変わる | 別の語として届くことがある |
| 音を近いものに置き換える | 日本語にない音を無意識に代用する | 語が特定できない |
では、聞き取れて読める人が、なぜ話すと通じないのでしょうか。現場で起きているのは、次の4つです。
理由1: リズムの単位が違います
日本語はモーラ(拍)を単位として、ほぼ等しい長さで音を並べます。英語は音節(syllable)を単位として、強く長い部分と弱く短い部分の差をつけます。
日本語のモーラの感覚のまま英語を言うと、全体が平坦になります。聞く側は強弱を手がかりに語を切り出しているので、平坦な音の連なりからは語を拾いにくくなります。
理由2: 語と語のつながりが消えます
聞き取りに慣れている人は、英語が続けて発音されることを知っています。ところが自分が話す番になると、語の切れ目ではっきり区切ってしまうことがあります。
読むときに見える単語の境目と、話すときの音の境目は一致しません。ここが分離できていないと、聞けるのに言えない状態が続きます。
理由3: 強く言う位置がずれます
英語の語には、どこを強く言うかが決まっています。位置がずれると、相手には別の語として届くことがあります。
スコアの上では、この情報は問われません。選択肢を選ぶときに、自分がどこを強く言うかは関係がないからです。
理由4: 音を近いものに置き換えています
日本語にない音は、無意識のうちに近い音へ置き換えられます。置き換えたことに自分では気づけません。自分の耳は、自分が意図した音を聞いてしまうからです。
関連: 日本人の英語が通じない最大の原因は発音だった|単語・文法・リスニングと切り分けてわかる本当のボトルネック で詳しく解説しています。
スコアが測っていないもの
| 場面 | 判定するもの | テストで問われるか |
|---|---|---|
| 他人が出した音を聞く | 相手の発話 | 問われる |
| 自分が出した音を確かめる | 自分の発話 | 問われない |
| 聞き返されたあとの立て直し | その場の対応 | 問われない |
ここまでの4つに共通するのは、自分が出した音を、自分で確かめられないという一点です。
聞く力は、他人が出した音を判定します。話す力は、自分が出した音を判定します。同じ「音」を扱っていても、必要な能力が違います。
もうひとつ、テストが扱わないものがあります。聞き返されたときにどうするかです。実際の会議では、一度で通じないことは普通に起きます。そのときに同じ言い方を繰り返すのか、言い換えるのか、ゆっくり言い直すのかを、その場で選びます。この対応の有無が、その場の成果を決めます。
私はマニラで13年ほど、いろいろな英語のアクセントに囲まれて仕事をしてきました。フィリピン系、中華系、欧米系で、それぞれ音の作り方が違います。そこで身についたのは、正しい発音を目指す感覚ではなく、相手に伝わる言い方を選ぶ感覚でした。この二つは重なる部分もありますが、同じではありません。
関連: 外資系で通用する英語はTOEIC高得点とは別物|面接・会議で話せない人のための対策 で詳しく解説しています。
AIと人で役割を分けます
| 担当 | 得意なこと | 任せる作業 |
|---|---|---|
| AI | 反復と比較を同じ品質で続けること | 録音と手本の比較、繰り返しの練習 |
| 人 | 何をどの順で直すかを決めること | 直す対象の特定、口の動きの指導 |
発音を直すとき、AIと人を対立させる必要はありません。得意なことが違うので、分けて使います。
AIが得意なのは、反復です。何度でも、同じ品質で、時間を選ばずに付き合ってくれます。自分の録音と手本を並べて比べる作業も、機械のほうが正確です。
人が得意なのは、何を直すかを決めることです。ずれている点が10ある中で、どれを最初に直せば通じるようになるのかを見極めます。ここには優先順位の判断が要ります。また、口や舌をどう動かせばその音になるのかは、外から見て指摘してもらうほうが早く進みます。
順番としては、人に見てもらって直す対象を決め、その反復をAIと行う形が現実的です。逆にすると、直す対象が定まらないまま練習量だけが増えます。
関連: 「中止」「延期」「見合わせ」「再開」を英語で伝える技術|業務停止のニュースで学ぶ4つの動詞の使い分け で詳しく解説しています。
今日から始める3つの練習
| 練習 | やること | 狙い |
|---|---|---|
| 練習1 | 30秒録音して翌朝に聞く | 自分の耳の補正を外す |
| 練習2 | 1文につき1語だけ強く長く言う | 平坦さを直す |
| 練習3 | 言い直しの型を3つ持つ | 聞き返されても会話を止めない |
練習1: 自分の声を録音して、翌日に聞きます
その場で聞くと、意図した音として聞こえてしまいます。一日空けてから聞くと、他人の音として聞けます。会議の自分の発言を30秒だけ録音して、翌朝に再生してください。
練習2: 1文につき1語だけ、強く長く言います
平坦さを直す最短の方法です。文の中でいちばん伝えたい語を1つ決め、そこだけを強く長く言います。他は弱く短くします。最初は大げさに感じるくらいで、相手にはちょうど届きます。
練習3: 言い直しの型を先に決めます
聞き返されたときのために、二の矢を用意しておきます。同じ文をゆっくり繰り返す、別の語に言い換える、綴りを言う、という3つです。これを順に出せるようにしておくと、会話が止まりません。
FAQ
Q: スコアを上げれば、いずれ通じるようになりますか?
なりにくいです。TOEIC Listening & Reading Test が測っているのは聞く力と読む力で、話す力は別のテストの対象になっています。スコアを上げる勉強を続けても、自分の口から出る音は測定されないままです。通じるようにしたいなら、話す側の練習を別に置く必要があります。
Q: どのくらい練習すれば変わりますか?
変わり方は直す対象によって違います。強く言う位置を直すような修正は、意識した直後から相手の反応が変わることがあります。一方で、日本語にない音を作れるようにする修正は、口の動きを覚え直すことになるので時間がかかります。まず前者から手をつけると、成果が見えやすくなります。
Q: AIの発音判定アプリだけで十分ではないですか?
反復の相手としては十分に使えます。ただし、判定は「どのくらい違うか」を返してくれても、「まず何から直すべきか」までは決めてくれません。ずれが複数あるときの優先順位づけと、口をどう動かすかの具体的な指示は、人に見てもらうほうが早く進みます。
Q: 自分では発音が悪いと思っていませんが、聞き返されます
自分の耳は、自分が意図した音を聞いてしまいます。ですから、自己評価と相手の受け取り方がずれるのは自然なことです。録音して翌日に聞く方法が有効なのは、この「自分の耳の補正」を外せるからです。
Q: 相手のアクセントが強くて聞き取れない場合はどうしますか?
この場合も、こちらの言い方を整えることが助けになります。自分の発話がはっきりしていると、相手も合わせて話し方を変えることがあります。加えて、確認の一言を型として持っておいてください。相手の言葉を短く言い直して確かめる習慣があると、聞き取れない場面での事故が減ります。
まとめ
TOEICで高いスコアを取っているのに通じないのは、能力が足りないからではありません。測っていない領域が別にあるというだけです。
分けて考えるべきものは、聞いて分かること、読んで分かること、そして自分の口から出た音が相手に届くことの3つです。前の二つが高い人ほど、三つ目の練習が後回しになりがちです。
まずは、自分の声を録音して翌日に聞くところから始めてください。そこで気づいたずれのうち、どれを最初に直すかを人に見てもらえば、練習の効率が変わります。
参考・出典
- TOEIC Listening & Reading Testとは(測定する2つの英語力と出題形式)|一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会: https://www.iibc-global.org/toeic/test/lr/about.html
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