英語が原因で昇進を逃した話|評価されていたのは語彙ではなく、発言が届くかどうか
外資系で成果は出ているのに昇進できない。原因が英語にあると気づいても、語彙や文法を勉強し直すと状況は変わりません。会議で発言を通す3つの型と、発音の印象が専門知識を打ち消してしまう場面を、実体験から整理しました。

外資系で働いていて、仕事の成果は出ているのに評価が上がらないことがあります。同じ時期に入った同僚が先に昇進していきます。その差が英語にあると気づいたとき、多くの方は「もっと勉強しなければ」と考えます。
ただ、何を勉強するかを間違えると、時間をかけても状況は変わりません。この記事では、昇進の場面で実際に効いている英語の要素を分けて考えます。
結論を先に書くと、評価されているのは語彙量でも文法の正確さでもなく、会議の場で発言が最後まで届くかどうかです。
昇進の判断で見られている3つの場面
| 場面 | 見られていること |
|---|---|
| 会議での発言 | 割り込まれずに主張を言い切れるか |
| 上位者への報告 | 短く結論から言えるか |
| 雑談と立ち話 | 業務外の関係を作れるか |
私は外資系にいたころ、業務そのものはちゃんとこなせていたと思います。ただ、英語をペラペラに話せる日本人の同僚は順調に昇進していったのに、自分は昇進できませんでした。外資系では、英語で話す力がそのまま昇進につながることを、身をもって経験しました。技術の力だけでは越えられない壁があると、はっきり感じた瞬間でした。
ここで大事なのは、私の業務評価が低かったわけではないという点です。仕事はできているのに上がりません。この状態が続くと、原因が見えないまま自信だけが削られます。
3つの場面のうち、いちばん影響が大きいのが会議です。会議で発言が途中で流されると、その提案は存在しなかったことになります。あとから同じ内容を別の人が言って通ることもあります。
誤解されやすい3つのこと
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 語彙を増やせば評価が変わる | 語彙より、言い切れるかが効く |
| 文法の誤りが評価を下げている | 文法の誤りは補われる |
| 発音は本質ではない | 発音で判断されることが実際にある |
1つ目:語彙を増やす方向に行ってしまう
英語が足りないと感じると、単語帳に戻る方が多いです。ところが会議で困っているのは、語彙が出てこないことより、言いかけた発言が途中で他の人に取られることです。
必要なのは語彙ではなく、話し始めてから結論に到達するまでの時間を短くすることです。長い前置きを削り、最初の一文に結論を置いてください。それだけで割り込まれる確率が下がります。
関連: なぜ日本の英語教育では外資で通用しないのか──評価軸が「正しさ」から「動かすこと」へ変わる で詳しく解説しています。
2つ目:文法の誤りを気にしすぎる
文法の誤りは、相手が補ってくれます。時制がずれても、冠詞が抜けても、意味は通ります。
気にしすぎると、話す前に文を組み立てる時間が長くなります。その沈黙のほうが、会議では損失になります。
関連: 欧米ビジネス文化を知らないと英語は通じない理由|外資系の会議で発言が届かない人のビジネス英語コーチング で詳しく解説しています。
3つ目:発音は本質ではないと考える
これがいちばん見落とされます。発音は「通じるかどうか」の問題だけではなく、相手があなたをどう扱うかを決めてしまうことがあります。
私はBDO銀行で投資商品の説明を受けたとき、発音だけで英語力を判断され、「This is money. You put money here.」と、子どもに話しかけるような説明をされました。難しい技術の話も理解できるのに、発音が悪いというだけで「英語ができない人」として扱われ、大事な説明まで省かれてしまいました。
長年かけて積み上げた専門知識が、発音ひとつで無かったことにされてしまいます。心にこたえる出来事でした。
この扱いが職場で起きると、そのまま評価に反映されます。「彼は英語が弱いから、この案件は別の人に」という判断は、公式な評価には残りません。
会議で発言を通す3つの型
| 型 | 効果 |
|---|---|
| 結論を最初の一文に置く | 割り込まれても要点は残る |
| 数字を先に出す | 相手が聞く姿勢に切り替わる |
| 発言の予告をする | 発言権を確保できる |
1つ目は、結論を最初の一文に置くことです。
I have a concern about the timeline. のように、何について話すかを最初に言います。前置きから入ると、結論に届く前に話題が移ります。
2つ目は、数字を先に出すことです。
Three weeks, not two. のように、具体的な数字を早い段階で置きます。数字が出ると、相手は反論も同意も具体的にせざるを得なくなり、聞く姿勢に変わります。
3つ目は、発言の予告です。
Can I add one point? と先に言えば、その場の全員が待つ状態になります。いきなり内容から入るより、この一言があるほうが最後まで話せます。
この3つは、英語力そのものより場の使い方の話です。だから語彙が増えるのを待つ必要がありません。
関連: 「相関はなかった」を誤読しない──OpenAIレポートで学ぶ統計のビジネス英語4表現 で詳しく解説しています。
何から練習するか
第1段階:自分の会議での発言を録音します
自分がどこで止まっているかを確認してください。話し始めから結論までに何秒かかっているか、途中で言い直しているかを見ます。
第2段階:結論の一文を先に用意します
会議の前に、その日言いたいことを1文で書き出してください。英語で1文です。この準備があるだけで、発言の質が変わります。
第3段階:自分の業務で毎週使う語の発音を確認します
前回の記事でも書きましたが、直すべきは英語全体ではなく自分がよく使う語です。とくに自社の製品名や部署名は、相手が推測できないので優先度が高くなります。
第4段階:会話練習と発音練習を分けます
ここを混ぜると、どちらも中途半端になります。
私自身、オンライン英会話は会話の流れを重視するため、発音が不正確でも文脈で理解されてしまい、発音矯正には向いていませんでした。発音アプリは基本的な音の出し方は教えてくれますが、実際の会話で通じやすくなるまでは改善されませんでした。短期間で劇的に変わると期待したことと、表面的なツールに頼りきったことの二つが、失敗の原因でした。
会話練習と発音矯正は、別種のスキルを身につける作業です。同じ時間枠でやらないでください。
FAQ
Q: 昇進に必要な英語のレベルはどれくらいですか
A: 職種と会社によって変わるため、一律の基準はありません。ただ実務で見ていると、内容を理解できていても、会議で発言を通せなければ評価は上がりません。検定の数字を上げることより、会議という具体的な場面で機能するかを基準にしてください。
Q: 発音を直せば評価は変わりますか
A: 発音だけで評価が決まるわけではありませんが、発音が原因で説明を省かれたり、案件を任されなかったりする場面は実際にあります。専門知識があっても伝わらなければ評価に反映されないので、投資する価値のある部分です。ただし発音の練習だけで昇進するわけでもありません。
Q: オンライン英会話を続けても意味がないのですか
A: 意味がないのではなく、目的が違います。会話の流れに慣れる、話す量を確保するという点では有効です。ただし発音の矯正には向きません。文脈で通じてしまうため、間違った音のまま定着します。目的ごとに手段を分けてください。
Q: 会議で割り込まれたとき、どうすればよいですか
A: 短く戻す言い方を用意しておいてください。Let me finish that point のような一文です。丁寧に言い直そうとすると、その間に話題が進みます。速さのほうが丁寧さより重要な場面があります。
Q: 何から始めればいちばん早く効果が出ますか
A: 会議の前に、言いたいことを英語で1文書き出すことです。準備に数分しかかかりませんが、発言が通る確率が変わります。発音や語彙の改善は時間がかかりますが、これは今日から実行できます。
壁は英語力ではなく、届いていないことにあります
仕事ができているのに評価が上がらないとき、原因は能力の不足ではなく、その能力が相手に届いていないことにあります。
次の3つを確認してください。会議で発言が最後まで届いているか、報告が短く結論から入れているか、そして専門知識が発音の印象で打ち消されていないかです。
そして直すときは、範囲を絞ってください。英語全体ではなく、会議での一文と、自分がよく使う数十語です。
参考・出典
- Common European Framework of Reference for Languages(CEFR)(欧州評議会。言語運用能力の共通参照枠。A1からC2までの段階を定義している)
- Cambridge English(ケンブリッジ大学英語検定機構。CEFRに対応した能力の目安を公表している)
- Cambridge Dictionary(語の発音記号と音声を確認できる辞典)
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