「上がり方が緩んだ」を英語で伝える技術|インフレ率の発表で学ぶ、鈍化・据え置き・目標超えのビジネス英語
値上がりが止まったのか、ペースが緩んだだけなのか。この違いを英語で言い分けられないと、本社への報告が誤って伝わります。インフレ率の発表を題材に、ease・slow・core・above target の使い分けと報告の型を学ぶ無料教材です。

| 日本語で言いたいこと | ありがちな英語 | 起きる誤解 |
|---|---|---|
| 上がり方が緩んだ | Prices went down. | 値下がりしたと受け取られます |
| まだ目標より高い | It's still high. | どの基準と比べて高いのか伝わりません |
| 一時的な要因を除くと | Except food. | 除いた理由が伝わりません |
| 3か月連続で下がった | It went down 3 times. | 3回下がっただけと読まれます |
海外の本社に現地の物価を報告するとき、いちばん誤解が生まれやすいのが「下がった」という一語です。
日本語では「インフレ率が下がった」と言えば、多くの人が「値上がりのペースが緩んだ」と理解します。ところが英語で Prices went down と言うと、価格そのものが下がったという意味になります。まったく違う報告になってしまいます。
この教材では、実際の発表を題材に、この違いを言い分ける型をまとめます。
要約
- 「上がり方が緩んだ」を Prices went down. と言うと、値下がりしたと受け取られます。
- 物価の話は、上がり方が緩んだのか、水準が下がったのか、まだ目標より高いのかを区別しないと誤解されます。
- 7月のインフレ率が6.2%に下がった件を題材に、使い分けの型と、報告を1つの型にまとめる手順を示しました。
題材:7月のインフレ率が6.2%に
報じられている内容によると、フィリピン統計庁は2026年8月5日、7月の消費者物価上昇率を6.2%と発表しました。6月の6.4%から下がり、3か月連続の低下となっています。
主因は運輸で、上昇率が12.8%から11.9%へ緩みました。食料とエネルギーの一部を除いたコアインフレ率も、4.4%から4.2%へ下がっています。
いっぽう、1月から7月までの平均は5.0%で、政府の目標とされる2〜4%を上回った状態が続いています。
つまり、「下がった」「それでも高い」「一時的ではなさそう」という3つを同時に伝える必要がある状況です。これを英語でどう言うかを見ていきます。
関連: 英語で数字を読み上げる技術|億・兆・小数点・年度が伝わらない4つの原因 で詳しく解説しています。
よくある失敗
| 言い方 | 何が問題か |
|---|---|
| Prices went down. | 値下がりしたことになります |
| Inflation stopped. | インフレが終わったことになります |
| It's getting better. | 主観であり、報告として弱くなります |
| Inflation dropped a lot. | 6.4→6.2は a lot ではありません |
1つ目がいちばん多い失敗です。 インフレ率が下がることと、物価が下がることは別です。英語では別の語を使いますので、混ぜると事実と違う報告になります。
4つ目も注意していただきたい点です。 0.2ポイントの変化に a lot や sharply を使うと、聞き手は大きな変化を想定します。程度を表す語は、数字に合わせて選んでください。
関連: 海外提携交渉の英語は「売る交渉」と別物|日本企業がアライアンスで押さえる4つの論点 で詳しく解説しています。
使い分けの型
1. 「上がり方が緩んだ」を言う
主役になるのが ease と slow です。
- Inflation eased to 6.2 percent in July.(7月のインフレ率は6.2%に鈍化しました)
- Inflation slowed from 6.4 to 6.2 percent.(6.4%から6.2%へ鈍化しました)
- Price increases are slowing, but prices are still rising.(値上がりのペースは緩んでいますが、物価は上がり続けています)
ease がいちばん使いやすい語です。 経済の報道でも標準的に使われ、「勢いが弱まる」という意味を正確に運びます。
3つ目の文は、覚えておく価値があります。日本語の「下がった」が誤解される場面で、そのまま補足として足せる形です。この一文があるだけで、報告の正確さが変わります。
2. 「それでも高い」を言う
比較の基準を必ず添えてください。
- It is still above the target range of 2 to 4 percent.(目標の2〜4%を依然として上回っています)
- The year-to-date average is 5 percent, well above target.(年初来の平均は5%で、目標を大きく上回っています)
- It remains elevated.(高い水準が続いています)
3つ目の elevated は、報道でよく使われる語です。「高い」とだけ言うより、基準に対して高い状態が続いているという含みを持ちます。
still と remains は、どちらも「まだ〜のままだ」を表します。数字が改善しても状況が解決していない、という報告にはこの2語が要ります。
3. 「一時的な要因を除くと」を言う
core という語が鍵になります。
- Core inflation, which excludes some food and energy items, fell to 4.2 percent.(食料とエネルギーの一部を除いたコアインフレ率は4.2%に下がりました)
- Core also eased, which suggests the slowdown is not just temporary.(コアも鈍化しており、今回の減速が一時的なものだけではないことを示唆します)
- Headline inflation includes food and energy; core does not.(総合インフレ率は食料とエネルギーを含みますが、コアは含みません)
headline と core は対で覚えてください。 headline が総合、core がコアです。この2語を使い分けられると、報告の解像度が一段上がります。
2つ目の which suggests も便利な形です。断定せずに含意を伝えられますので、確定していない話を報告するときに使えます。
4. 「3か月連続」を言う
日本語の「連続」は、英語では位置に注意が要ります。
- It has eased for three straight months.(3か月連続で鈍化しています)
- This is the third consecutive month of slowing inflation.(インフレ鈍化は3か月連続です)
- Transport was the main driver of the slowdown.(鈍化の主因は運輸でした)
straight と consecutive はどちらも「連続の」を表します。前者は口語寄り、後者は書き言葉寄りです。どちらでも通じますので、話しやすいほうを固定してください。
3つ目の driver は「主因」を表す語で、経済の話題で頻出します。The main driver was... という形で覚えておくと、原因の説明が一文で済みます。
報告を1つの型にまとめる
4つの要素を、この順番で並べてください。
| 順番 | 言うこと | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 数字 | Inflation eased to 6.2 percent in July. |
| 2 | 主因 | Transport was the main driver. |
| 3 | 基調 | Core also eased, to 4.2 percent. |
| 4 | 但し書き | It remains above the 2 to 4 percent target. |
この4文で状況が伝わります。読み上げてみると分かりますが、1文ずつが短いのが特徴です。
順番も大事です。最後に但し書きを置くことで、「良くなったが解決していない」という位置づけが正しく残ります。逆に但し書きを先に言うと、改善そのものが伝わりにくくなります。
練習の手順
| 手順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 4文の型を音読する | 上の表の4文をそのまま10回 | 5分 |
| 2. 自社の数字に差し替える | 売上でも費用でも構いません | 15分 |
| 3. 録音して聞き返す | 詰まる箇所を特定します | 5分 |
| 4. 想定質問を2つ用意する | 「いつ目標に戻るのか」「事業への影響は」 | 10分 |
手順2がいちばん大事です。 インフレの話でなくて構いません。「原価の上昇率が緩んだが、まだ想定より高い」という報告も、まったく同じ4文の型で言えます。
- Our material costs rose 4 percent this quarter, down from 6 percent.
- The main driver was the change in supplier.
- Excluding the one-off shipping charge, the increase was 3 percent.
- It is still above the 2 percent we budgeted.
この形に置き換えられると、型が自分のものになります。
手順3の録音も省略しないでください。 ease、elevated、consecutive のあたりで詰まる方が多く、そこが実際の会議でも止まる箇所です。
なお、AIの翻訳ツールで下書きを作るのは有効ですが、こうした報告では相手の反応を見ながら言い換える力が要ります。語の選択の理由まで含めて身につけるには、専任の講師によるマンツーマンの指導が確実です。
FAQ
Q: ease と slow は、どちらを使えばよいですか?
A: どちらでも通じます。ease は「勢いが弱まる」、slow は「速度が落ちる」に近い語感です。インフレ率の話ではどちらも標準的に使われますので、言いやすいほうを固定してください。両方を1つの報告の中で混ぜても問題ありません。
Q: decline や fall との違いは何ですか?
A: decline と fall は「下がる」という一般的な語で、何が下がったのかを明示しないと誤解を招きます。Inflation fell は「インフレ率が下がった」で正しいのですが、Prices fell は「物価が下がった」になります。主語を間違えないことが要点です。
Q: percentage point との使い分けは?
A: 6.4%から6.2%への変化は、0.2 percentage points の低下です。It fell by 0.2 percent と言うと、6.4の0.2%分という意味になり、桁が違います。差を言うときは percentage point を使ってください。
Q: 「まだ目標に戻っていない」を短く言えますか?
A: Still above target. で足ります。会議の場では、この3語だけで通じます。書面ではもう少し丁寧に It remains above the target range としてください。
Q: 発音で気をつける語はありますか?
A: elevated と consecutive です。どちらも音節が多く、強く読む位置を外すと聞き取られにくくなります。この2語と、自社名・拠点名だけでも整えておくと、報告の進み方が変わります。
「下がった」を正確に言えると、報告が誤解されない
インフレ率の報告で必要なのは、難しい語彙ではありません。値上がりのペースが緩んだこと(ease / slow)、それでも基準より高いこと(still above target / elevated)、一時的でないこと(core)、そして継続していること(consecutive)——この4つを言い分ける型です。
まずは、いま手元にある自社の数字を1つ選び、4文の型に置き換えてみてください。書けない箇所があれば、それは英語ではなく、数字の理解が固まっていない箇所です。
プロナビのビジネス英語コーチングでは、実際に報告する相手と場面から逆算して、こうした型と想定問答をマンツーマンで組み立てています。録音した報告を一緒に聞き直すところから、始めてみませんか。
参考・出典
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