「下がる」を英語で伝える技術|電気料金の値下がりニュースで学ぶ cut・lower・downward adjustment の使い分け
値下げや引き下げを英語で伝えるとき、cut・lower・reduce・downward adjustment は響きが違います。電気料金が補助金の再開で下がったニュースを題材に、4語の使い分けと「補助」と「値下げ」の言い分けを、ビジネス英語の実践として解説する無料教材です。

2026年8月の検針分(7月使用分)から、大手電力10社すべてで電気料金が値下がりしました。理由は、4月から止まっていた政府の補助金が、7月使用分から4か月ぶりに再開したことです。月に450kWhを使う世帯で、平均およそ1,354円下がったと報じられています。
このニュースを英語で説明しようとすると、いきなり難しくなります。電力会社が値下げしたわけではないからです。
| 語 | 誰が下げたか | 響き |
|---|---|---|
| cut | 主体が意図的に下げた | 強い、見出し向き |
| lower | 主体が下げた(cutより穏やか) | 中立的で使いやすい |
| downward adjustment | 計算式や制度に沿って下がった | 事務的、公式文書向き |
日本語では「電気代が下がりました」で済みます。英語では、誰の判断で下がったのかを決めなければ文になりません。今回のように「補助金が戻ったので請求額が下がった」という場合、cut を使うと事実と違う説明になります。
私はフィリピンに12年以上住んでいますが、日本語のあいまいな表現を英語の明確な表現に変換する判断が、いちばん難しいと感じています。「下がりました」という日本語は、誰の判断なのかを言っていません。英語では、そこが最初に問われます。
要約
- 2026年8月の検針分(7月使用分)から、大手電力10社すべてで電気料金が下がりました。4月から止まっていた政府の補助金が再開したためです。
- 月450kWhを使う世帯で、平均およそ1,354円下がったと報じられています。
- これを英語で説明すると難しくなります。電力会社が値下げしたわけではないからです。誰が下げたかで動詞が変わります。
日本人がつまずく4つの場面
| つまずく場面 | 起きること |
|---|---|
| すべてを cut で言う | 大幅に切り下げた印象になり、相手が身構える |
| down を動詞のように使う | 文法として成立せず、意味が伝わらない |
| 補助と値下げを区別しない | 単価が下がったと誤解され、来期の見通しがずれる |
| 主語を省く | 誰が下げたのかが不明で、責任の所在が伝わらない |
すべてを cut で言ってしまう
cut は日本語の「カット」の印象から選ばれやすい語ですが、英語では思い切って削るという響きを持ちます。
数パーセントの調整を We cut our prices. と言うと、大幅な値引きをしたように聞こえます。実際には小さな引き下げなのに、相手は「そこまでできるなら、もっと下がるのでは」と考えます。交渉の場面では不利に働きます。
関連: 英語の相槌が会話を止める|日本語のあいづちを英語のリズムに合わせる4つの調整 で詳しく解説しています。
down を動詞として使ってしまう
The price downed. とは言えません。down は形容詞や副詞、あるいは前置詞として使う語で、価格が下がる文脈での動詞にはなりません。
正しくは The price went down. や The price came down. です。動詞は go や come のほうが担います。
関連: カタカナ英語があなたの評価を下げる理由|日本人ビジネスパーソンのための発音矯正コーチング で詳しく解説しています。
補助と値下げを混ぜてしまう
今回のニュースがまさにこの例です。請求額は下がりましたが、電気の単価そのものが下がったわけではありません。
英語では、この2つを言い分けます。
- The unit price was lowered.(単価が下がった)
- The bill went down because the subsidy resumed.(補助が再開したので請求額が下がった)
海外の本社に報告するとき、前者と後者では意味がまったく違います。前者なら来期も安いままですが、後者は補助が止まれば元に戻ります。この区別を落とすと、翌期の予算の見積もりが狂います。
主語を省いてしまう
日本語では「料金が下がりました」で十分ですが、英語では誰が下げたのかを示すかどうかで意味が変わります。
The company lowered the rate. なら会社の判断です。The rate went down. なら結果としてそうなったという意味で、判断の主体を示していません。値下げの説明では、この違いが responsibility(誰の判断か)の話に直結します。
使い分けの決め手は「誰の判断か」
| 状況 | 使う語 | 例文 |
|---|---|---|
| 自社の判断で下げた(大きく) | cut | We cut the price by 15 percent. |
| 自社の判断で下げた(穏やかに) | lower | We lowered the monthly fee. |
| 制度や計算式に沿って下がった | downward adjustment | A downward adjustment was applied this month. |
| 結果として下がった | go down / come down | The electricity bill went down. |
downward adjustment は「自動的に」の合図です
公共料金や金融商品の説明で頻出する表現です。人が決めたのではなく、決められた計算式に当てはめた結果であることを示します。
この表現を知っていると、値下げの説明で「こちらの好意ではなく、制度に沿った処理です」と伝えられます。次回の交渉で不利になりません。
subsidy まわりの語を対で覚えます
今回のニュースのように、補助が止まったり戻ったりする話は、日本の公共料金では繰り返し出てきます。次の4語をまとめて入れてください。
- subsidy — 補助金そのものです
- suspended — 止まっていた状態です(The subsidy was suspended in April.)
- resumed — 再開したという意味です(The subsidy resumed in July.)
- reflected in — 請求に反映されたという言い方です(It was reflected in the August bill.)
この4語があれば、今回のニュースは3行で説明できます。
reduce は書き言葉寄りです
reduce も「下げる」ですが、やや硬い響きがあります。社内文書や契約書では自然ですが、会話では lower のほうがよく使われます。
We reduced the cost by streamlining the process. のように、下げた方法を一緒に述べる文脈で使うと収まりがよくなります。
tariff は「関税」とは限りません
英語のニュースで電気やガスの料金を扱うとき、tariff という語がよく出てきます。これは料金表・利用料金という意味で、関税とは別です。
貿易の話をしていないのに tariff が出てきたら、料金表のほうだと考えてください。実務での誤解が多い語です。
上げる側の語も対で覚えます
下げる語だけ覚えても、実務では半分しか使えません。対になる語を一緒に入れてください。
- cut ↔ raise / hike(hike は見出しで多用されます)
- lower ↔ raise
- downward adjustment ↔ upward adjustment
- go down ↔ go up
hike は名詞としても使われ、a rate hike(利上げ、値上げ)という形をよく見ます。
今日から使える4つの練習
| 練習 | 所要時間 | ねらい |
|---|---|---|
| 今回のニュースを3行で書く | 10分 | 補助と値下げを言い分ける |
| 自社の値下げを4通りで書く | 10分 | 語による響きの差を体で覚える |
| 見出しの語を1週間観察する | 毎日3分 | 実際にどの語が選ばれるかを知る |
| 声に出して読む | 毎日3分 | 会議で口に出せるようにする |
今回のニュースを3行で書きます
まず、これを書いてみてください。
- The government subsidy was suspended in April and resumed for July usage.
- As a result, electricity bills went down for all ten major utilities.
- The unit price itself was not lowered.
3行目があるかないかで、聞き手の理解がまったく変わります。日本語の報道では省かれがちな部分です。
自社の値下げを4通りで書きます
同じ内容を、cut、lower、downward adjustment、go down の4つで書き分けてください。
- We cut the annual fee by 20 percent.
- We lowered the annual fee slightly.
- A downward adjustment was applied to the annual fee.
- The annual fee went down this year.
並べると、相手に与える印象がまったく違うことが分かります。どれが自社の状況に合っているかを選べるようになれば、この教材の目的は達成です。
見出しの語を1週間観察します
英語のビジネスニュースの見出しは、cut と hike を好みます。短くて強いためです。本文に入ると lower や adjustment に変わることが多くなります。
見出しと本文で語が変わることに気づけると、書き手が何を意図しているかまで読めるようになります。
声に出して読みます
書けても、会議で口に出せるとは限りません。私は外資系にいたころ、相手の話は聞き取れるのに、自分の発音や言い回しのせいで意図が正確に届かない場面が多くありました。「聞く力」と「話す力」の差の大きさを痛感した経験です。
発音では、lower の最初の音に注意してください。日本語の「ロ」で始めると、rower(漕ぐ人)に近く聞こえます。舌の先をどこにも当てずに始めるのが要点です。adjustment と resumed は、どちらも第2音節を強く読みます。
自分の音が正しいかどうかを自分で判断するのは、母語の癖が邪魔をするため難しい作業です。プロナビのようなマンツーマンの指導では、講師が音を聞き分けて具体的に指示できるので、独学より確実に早く進みます。AIの発音チェック機能は補助としては有効ですが、日本人特有の癖を切り分けて直すには、TEFL / TESOL やBPOの現場で訓練を受けた講師との指導が必要です。
FAQ
Q: discount と cut はどう違いますか?
A: discount は、定価があってそこから割り引くという意味です。cut は価格そのものを下げます。定価を維持したまま今回だけ安くするなら discount、価格表を書き換えるなら cut や lower を使ってください。この区別は取引先との認識のずれを防ぎます。
Q: 「据え置き」は英語でどう言いますか?
A: unchanged がもっとも一般的です。The rate remains unchanged. の形で使います。金融の文脈では hold も使われ、The central bank held rates. のように書かれます。補助金の話であれば、The subsidy remains in place. という言い方も使えます。
Q: slightly と marginally の違いは何ですか?
A: どちらも「わずかに」ですが、marginally のほうが硬く、数値の説明に向いています。会話では slightly、報告書では marginally という使い分けが自然です。どちらも下げ幅が小さいことを示すので、相手の期待を上げすぎない効果があります。
Q: 「値下げ交渉をしたい」と英語で切り出すには?
A: Could we revisit the pricing? が角の立たない言い方です。直接 lower the price と言う前に revisit(もう一度見直す)を使うと、交渉の余地を残せます。相手も断りやすくなるため、関係を保ったまま話を進められます。
Q: 数字はどう添えるのが自然ですか?
A: by を使って下げ幅を、to を使って下げた後の水準を示します。lowered by 5 percent は5パーセント分下げた、lowered to 5 percent は5パーセントの水準まで下げたという意味です。この前置詞を間違えると金額が変わってしまうので、実務では最も注意すべき点です。
「下げた」の一言に、判断が入っています
cut、lower、downward adjustment、go down。日本語ではどれも「下がる」ですが、英語では誰の判断で下がったのかが語に埋め込まれています。
そして今回の電気料金のように、補助が戻ったから請求が下がったという場合は、値下げとは別の言い方が要ります。ここを混ぜると、来期の見通しまで誤って伝わります。
今日の一歩として、今回のニュースを3行の英語で書いてみてください。3行目の「単価そのものは下がっていない」まで書けたなら、この教材は身についています。実際の場面で通じる発音まで含めて整えたい方は、プロナビの発音診断で現在地を確認するところから始められます。
参考・出典
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