期限の英語|within / by / not later than / prior to を公的文書で読み分ける
英語の期限はwithin・by・not later than・prior toで意味が違いますが、どれも「〜まで」と訳せるため読み違えます。実務でいちばん危ない「not later than 30 days prior to X」の読み方と、calendar daysとworking daysの差を整理しました。

契約書や公的文書で期限を読み違えると、間に合ったつもりで遅れます。しかも遅れたことに気づくのが、指摘されてからになります。
原因は、日本語の「〜まで」が複数の意味を持つことにあります。英語では within、by、not later than、prior to が別々の意味を担っていますが、どれも「〜まで」と訳せてしまうためです。
この記事では、この4つを読み分ける基準を扱います。在比の日本人ビジネスパーソンが、就労や契約の文書で期限を正しく取れるようになることを目標にします。
4つの語の基準
| 語 | 起点 | 意味 |
|---|---|---|
| within | ある出来事 | その時点から数えた期間内 |
| by | 指定の日時 | その日時までに |
| not later than | 指定の日時 | その日時を超えてはならない |
| prior to | ある出来事 | その出来事より前に |
within は起点が要ります。 within thirty days だけでは期限が決まりません。何から30日かが書かれているはずなので、必ずその起点を探してください。within thirty days from the date of receipt なら受領日から30日です。
by は締切の指定です。 by 31 December は12月31日まで。その日を含みます。
not later than は by とほぼ同じ意味ですが、より強い言い方です。 公的文書では、遅れが許されないことを明示するときに使われます。
prior to は「その前に」です。 prior to the intended date of employment なら、雇用開始予定日より前という意味になります。ここが最も間違えやすい部分です。
関連: 「発音が通じない」と言われたあの日から|直すべきは英語全体ではなく自分の30語 で詳しく解説しています。
実務でいちばん危ない組み合わせ
| 表現 | 正しい読み方 | よくある誤読 |
|---|---|---|
| not later than 30 days prior to X | Xの30日前までに | Xから30日以内 |
| within 30 days after X | Xから30日以内 | Xの30日前まで |
| by X, but not before Y | YからXの間に | Xまでならいつでも |
1行目が実務でいちばん危険です。not later than thirty (30) days prior to the intended date of employment という形は、就労関係の文書でよく出ます。
これは「雇用開始予定日の30日前までに」という意味です。開始日から30日以内ではありません。 逆に読むと、締切をすでに過ぎた状態で準備を始めることになります。
見分け方は、prior to の有無です。prior to があれば、基準になる日より前を指しています。after があれば後です。この2語を先に探してください。
3行目も見落とされます。but not before が付くと、早すぎる提出も受け付けられません。受付期間の始まりと終わりの両方が指定されている形です。
読む手順
手順1:期限の語を全部拾う
文書を開いたら、within、by、not later than、prior to、after、before を検索します。この6語が期限に関わる語です。
手順2:それぞれの起点を確認する
拾った語ごとに、何を基準にしているかを見ます。within なら「何から」、prior to なら「何の前か」です。起点が書かれていない期限は、どこか別の場所で定義されているはずです。
手順3:カレンダーに置き換える
読んだ内容を、実際の日付に直してください。「雇用開始が11月1日なら、10月2日までに提出」のように具体化します。ここで初めて、間に合うかどうかが分かります。
手順4:早すぎる提出が禁じられていないか確認する
not before や no earlier than がないかを見ます。あれば、受付が始まる日も確認が要ります。
私はマニラに13年住んでいますが、日本語のあいまいな表現を英語の明確な表現に変換する判断が、いちばん難しいと感じています。逆に、英語の文書を日本語で理解するときも同じです。英語は期限の起点をはっきり書き分けるので、その書き分けを「〜まで」の一語で潰さないことが大切です。
期限と一緒に出る語
| 語 | 意味 |
|---|---|
| calendar days | 暦日。休日を含む |
| working days / business days | 営業日。休日を除く |
| from the date of | その日を起点として |
| inclusive | その日を含む |
| upon | 〜と同時に、〜のとき |
calendar days と working days の違いは、日程に直接効きます。within 15 working days は暦の15日ではありません。フィリピンは祝日が多いため、この差が実務で大きくなります。
upon も注意が要ります。upon receipt は「受領時に」で、期間ではありません。受け取ったその時点という意味です。
練習:次の文はいつまでか
以下は公的文書に典型的な形です。実際の日付に直して考えてください。
-
The application shall be filed not later than thirty (30) days prior to the intended date of commencement. → 開始予定日の30日前までです。開始日が11月1日なら、10月2日までに提出します。
-
The employer shall submit the report within fifteen (15) working days from the date of approval. → 承認日から15営業日以内です。暦の15日ではないので、祝日を数えて計算します。
-
Applications may be filed by 30 September, but not before 1 August. → 8月1日から9月30日の間です。9月30日までならいつでもよいわけではありません。
2つ目の working days を calendar days と読むと、実際より短く見積もることになります。フィリピンでは祝日が入るとさらに差が開きます。
FAQ
Q: within と by はどう違いますか
A: within は起点から数えた期間で、by は指定の日時そのものです。within 30 days from receipt は受領日から30日という幅を持ちますが、by 30 September は9月30日という一点を指します。within を見たら起点を探し、by を見たらその日付を確認してください。
Q: prior to と before は同じ意味ですか
A: 意味はほぼ同じで、prior to のほうが公的文書で使われる硬い言い方です。読むときに区別する必要はありません。どちらも「その前」を指すので、後ろに来る出来事が基準になります。
Q: working days の数え方はどうすればよいですか
A: 土日と祝日を除いて数えます。フィリピンは祝日が多く、直前に追加されることもあるため、余裕を持って計算してください。暦日で計算すると実際より早く着くと誤解し、締切を過ぎることがあります。
Q: 起点が書かれていない within を見つけたらどうしますか
A: 同じ文書の別の箇所で定義されているはずなので、その語を検索してください。定義が見つからない場合は、発行元に確認してください。起点を自分で推測すると、その推測が外れたときに期限を外します。
Q: 期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか
A: 文書によって扱いが違います。遅延に対する規定が別に書かれていることがあるので、まず文書内で penalty、late、delay といった語を探してください。規定がなければ、発行元に速やかに連絡するのが実務上の対応になります。
まとめ:prior to と after を先に探してください
期限の語は4つです。within は起点から数えた期間、by は指定の日時、not later than はより強い締切、prior to はその出来事の前です。
実務でいちばん危ないのは not later than 30 days prior to X という形で、これは「Xの30日前まで」です。Xから30日以内ではありません。prior to があるか after があるかを先に確認してください。
そして calendar days と working days を混同しないでください。フィリピンでは祝日の数が効いてきます。
なお、文書の書式と運用は変わります。この記事の語法の説明は一般的なもので、実際の手続きでは所管の官庁や取引先の最新の文書を確認してください。
参考・出典
- Cambridge Dictionary(語の用法と法律・ビジネス分野での意味を確認できる辞典)
- Merriam-Webster Dictionary(アメリカ英語の語義と用法を確認できる辞典)
- Department of Labor and Employment(労働雇用省)(就労関係の英文告示。期限の表記の実例を確認できる)
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